美酒爛漫 秋田銘醸株式会社

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酒と人 ~絆・つながり~ 訪問記

 

 〝豊かな大地の郷土料理

 いぶりがっこ本舗「雄勝野きむらや」を訪ねました。

 

 

 

 みちのく湯沢市に初雪が降り、いよいよ長い冬の到来です。日本酒の楽しみ方は「冷や」「燗」いろいろですが、これからは燗酒が身に沁みて美味しい季節です。

 日本酒の肴に欠かせない〝がっこ〟(=秋田弁で漬物のこと)、中でも秋田県の県南地方の郷土料理にもなっている《いぶりがっこ》の仕込みが最盛期を迎えるということで、湯沢市院内にあるいぶりがっこ本舗「雄勝野きむらや」を訪ねました。

 

 「雄勝野きむらや」のある院内地区は、豊かな大地によって育まれた素材と、初秋から冷え込む気候で、漬物作りに恵まれた環境です。古くから「銀山」で栄え、最盛期には銀産出量日本一を誇る国内最大の銀山だったため、技術者や労働者など沢山の人が全国から訪れ、〝がっこ〟はおもてなしとして振る舞われました。大きな市場と、さまざまな地域文化で、たくさんのバリエーションの〝がっこ〟が生まれました。また、酒造業の繁栄とともに〝酒〟と〝がっこ〟は地域に根付き、共に歩んできました。

 

いぶりがっこ .jpg いぶりがっこ本舗「雄勝野きむらや」三代目社長の木村吉伸さんに《いぶりがっこ》の歴史と、いぶりがっこの出来るまでを教えていただきました。

 

 昔、いぶりがっこは雄勝野のほぼ全戸で造られ、冬場の保存食として、また酒の肴やお茶うけなどのもてなし料理として欠かせないものでした。

いぶりがっこ 2 .jpg いぶりがっこを造るには、大根を天日干しにしてある程度水分を抜くことが必要ですが、山々に囲まれた雄勝野は日照時間が少なく、降雪の時期が早いので、殆どの家で大根を囲炉裏の上に吊るして、干し上げて漬ける〝燻り(いぶり)漬け〟が造り継がれてきました。しかし薪ストーブが普及して囲炉裏が無くなると、いぶりがっこも造られなくなりました。薪ストーブで乾燥すると大根に『す』が入るからです。

 〝漬物は家々のもてなし料理〟で、商品として売るという文化がまだなかった昭和38年、初代の木村社長が初めて漬物屋として商売を始めたそうです。秋田県では一番古い漬物業者です。地元の山菜の味噌漬け、粕漬けを箱詰めにして関東地方に売り込んでいましたが、物産展に出ている関東の漬物屋を見ると、それぞれ特徴的な漬物があり、うちにもひとつ看板商品がほしいと思い、燻り漬けの商品化を考えたそうです。完成した燻り漬け商品に《いぶりがっこ》と命名し、販売を開始、商標登録を取得しています。

 初めは苦戦しましたが、名前の響きと癖のある味が関東地方で少しずつ話題になり、秋田に来て本場のいぶりがっこを買われる人も増え、何より都会で暮らしている秋田県人が懐かしんで買って下さったりと、売れ行きも上がって行きました。一度は消えかけた《いぶりがっこ》も初代木村社長が商品化したものが物産展などから地道に広がり、見事に復活を遂げました。今では「雄勝野きむらや」の《いぶりがっこ》は、TVや雑誌でも紹介されて、お漬物お取り寄せNo.1にもなっているそうです。

 

 お話を伺った後、工場も見学させていただきました。近くまで行くと燻煙が見えてきました。

 燻しに使う木材はナラの木、桜、ケヤキ。桜の比率が高いと美味しい《いぶりがっこ》が出来るそうです。桜の木はなかなか手に入りにくいとのことですが、知り合いの木材屋さんから買い入れているそうです。 

 工場入口には採れたての大根がきれいに並んでいました。現在では年間60万本もの大根を漬け込む県内一の規模になり、関東圏でも人気が高まっています。

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     燻煙の上がる工場             積み上げられた燻し用の木材     きれいに並ぶ採れたての大根

 

編み込み作業

 いぶりがっこは鮮度が命なので、畑で収穫した翌日の夕方までには、薫煙の火入れをしなくてはなりません。8本~10本を手早く紐で編み込みます。

 

編み込み吊り下げ

 大根の鮮度を落とさぬよう、ひと綴り10キロにもなる大根の束を、段取り良く手早く、かけ声とともに天井につり下げます。

 

燻煙乾燥

 焚き木は火加減にメリハリをつけながら4日~5日間絶やすことなく燃し続け、当日の気温、湿度、大根の状態によって火加減を調整します。しんなりムラなく色良く干しあげるには長年の経験と熟練を要する気の休まらない難儀な作業です。

 燻製場に入るとナラや桜、ケヤキをを燃した甘く香ばしい香りに、どこか懐かしさを感じました。

 

漬け込み

 干し上がった大根はその日のうちに米ぬか、塩を主体にザラメを加え、手早く丹念に漬け込んで行きます。保存料、着色料、酸化防止剤、調味料(アミノ酸等)は使用しません。そうすることで焚き木干しの香りを損なわず、素朴で自然な風味のいぶりがっこになるのです。

 「雄勝野きむらや」のいぶりがっこは無添加です。

 

いぶりがっこ 6 .jpg  iburi 1  -2.jpg  いぶりがっこ 7 .jpg  iburi 2  .jpg

 

写真左から順に、「編み込み作業」、「編み込み吊り下げ」、「燻煙乾燥」、「漬け込み」風景

  

熟成

 あとは待つだけ。

  

 熟成は温度管理が難しいそうです。低温で2ヶ月以上かけてゆっくり発酵させます。発酵がゆっくりと進んで行き、数ヶ月の後に樽が、こぽっ行き...こぽっ...と音を立てると、完成の合図です。酒造りと相通じるものがあります。

 

 樽出ししたいぶりがっこを、真空パックの包装にして出荷します。

 無添加にこだわることは、素材の旬と鮮度にこだわること。材料を厳選し丹念に漬け込むことで、雄勝野の気候風土が美味しさを作ります。手間も時間も掛かりますが、漬け上がったものには素材本来の素朴で自然な風味を感じることができます。

 

いぶりがっこ 9 .jpg いぶりがっこの仕込みは9月下旬~12月いっぱいとのこと。忙しい最中、取材にご協力いただきありがとうございました。初めて聞くいぶりがっこの歴史と作業工程見学に思い出深い取材ができました。

 

 木村社長が仰っていたモットー『みんなで楽しく思いやりを持って仕事をし、協力すること。製法がシンプルな故にごまかしはきかない。段取り良く、細部まで手を抜かず真面目に造らなければ良いものは出来ない。』は、心に響きました。

 工場で会う従業員の皆さんからいただく挨拶や、きびきびとそして和やかに作業する姿に、とても素晴らしい会社だと感じました。

 

 私のお薦めは、豊かな大地が育んだお薦め《いぶりがっこ》をつまみに、「酒・米・人」すべてが秋田産、全国燗酒コンテスト2017の「プレミアム燗部門」で〝最高金賞〟を受賞した「美酒欄爛漫特別純米酒」を、ぬる燗で一杯です。

 

(藤原 里実 記)

 

 

 

 株式会社 雄勝野きむらや  秋田県湯沢市下院内字常磐町91番地

   電話 0183-52-3650  FAX 0183-52-4570

   ホームページ http://www.iburigakko.com

 

 

 

 

 

 

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